医療コラム
「お腹のトラブル、見逃さないで」BY久保先生
みなさんこんにちは、さくらクリニックの医師の久保です。
ハノイは雨期に入り、ムシムシした暑さになってまいりました。私は昨年11月に来たためにハノイの暑い時期は初体験となるわけですが、この湿度で35℃以上あるのは東京などの照り返しのある35℃以上とはまた違った暑さだと感じて嫌気がさしています…泣。暑。
こういう時期にはどうしても食あたり・食欲不振など、おなかにまつわるトラブルが増えてきてしまいます。日本で診療をしていてもこの傾向があるのですが、暑さのより強いハノイはそれ以上であってもおかしくはありません。実際に、最近はコロナも落ち着き人の交流が多くなったこともあってか、腹痛・下痢などの症状で来院される方が大人子供問わずおおくいらっしゃいます。いわゆる胃腸炎が流行っているという状況です。
ただ、この食あたりや食欲不振が、暑さのせいあるいは食べ物による一過性の胃腸炎だとおもっていたら、実は別の病気のせいだった・・・ということが我々医者たちはよく経験します。暑くて夏バテ…と思っていたけど涼しくなってもよくならないから胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)やってみたら胃がんだった…というのは時々ある話です。
もちろん腹痛下痢などの症状がある場合は水分補給に加えて食事を制限したり、整腸剤・腸管運動改善薬あるいは抗生物質などの治療薬を飲んでいただき治すことが大事ですが、それらの症状が2週間といった長い期間(この期間によっては個人差もありますので何とも言えませんが…)続くようであれば、ただの胃腸炎でない可能性も考えていく必要もある、とお考えいただいたほうが良いです。
少しがん検診についてお話しておきます。日本では胃や大腸に関するがん検診について、いわゆるバリウム検査(胃X線検査)や検便(便潜血反応検査)にてスクリーニングを行うことが多いと思います。大腸がん検診の基本が検便であることは世界的に変わりのない重要なことなのですが、バリウム検査は国によってはもう行われていない検査であり、当院でも行っていません。がんの検査となると胃カメラをおすすめしています。バリウム検査と胃カメラのどちらが良いのか?という話は、医学的なこと・公衆衛生的なこと・経済的なことなどいろいろな点から議論する必要があるため話が長くなるのでここでは割愛しますが、いずれにせよおなかの痛みや食欲不振などの症状が続くようであれば、実は隠れている大きな病気がないか、念のため検査することも大切であることはお伝えしたいと思います。その隠れている大きな病気の1つはがんです。
また、がん対策ということに関しては、ピロリ菌検査も非常に重要です。ピロリ菌は胃がんの原因として非常に重要であり、駆除することによって胃がんの発生率を大幅に減らすことができると知られています。
普段、食あたりや胃腸炎を起こしても治るのが当たり前と思っていても、なかなか治らない。そんなとき調べてみるとピロリ菌陽性であったり早期の胃がんであったり…そういう可能性があることを考えると、がん検診としての胃カメラやピロリ菌検査は非常に大切な検査項目です。ピロリ菌そのものに感染しているからといって症状があるわけではないのですが、健康診断の際にオプションとして検査することも可能です。検査方法もいくつかありますが、どれも簡便です。
以上、単なる胃腸炎と思っていたらがんだった・・・ということの可能性についてお話いたしました。もしこれを読まれているあなたが、20~30代の若い方であっても、ご家族・ご親族にがんを患ったことのある方がいらした場合は検査を受けたほうが良い方もいらっしゃいます。我々医師が必要と判断すれば保険で胃カメラ検査を行うこともあります。そのあたりの詳しい判断は、個別にご相談していただいた方が良いと思いますので、何か気になることがありましたら、遠慮なくご相談くださいね。
このほかにも、さくらクリニックでは今後、胃がんを含めたがん検診コースを新たに設置する予定です。追ってご紹介いたしますが、ご興味ある方はぜひ受診された際にご相談ください。
written by Dr Kubo2022.6.13