医療コラム
「ヤケドムシ」BY久保先生
みなさんこんにちは、さくらクリニックの医師の久保です。
暑さのピークは越えたように思いますが、コロナやインフルエンザも流行っており、まだまだ感染症が多い状況です。ベトナムは完全にアフターコロナの世界に突入していますが、風邪だけでなく、気を付けなくてはいけないもの。それは虫です。以前、蚊についてご案内したことがありますが、現在もハノイではまだデング熱含めて蚊による媒介で生じるご病気はホーチミンほど大流行しておりません。そもそも咳症状やのどの痛みなどで来院される方が多く、デング熱を疑うような方もとても少ないのが現状です。
https://sakurahanoi.com/mushisasare-649.html
そこで今回は、以前Twitterでも載せていた「ヤケドムシ」について、少し文章を書き加えたうえでHPでもご紹介しようと思います。
日本にも生息している虫ですが、正式名称;アオバアリガタハネカクシ(Paederus fuscipes)というそうです。 この虫は触れただけでも腫れたりただれたりするという厄介な虫です。Wikipediaさんから引用した写真のとおり、赤っぽい色と黒の2色の虫です。私は日本でこの虫を見たことはないですが、日本にも広く生息しているようです。皆様ご存じでしたか??ハノイでは見かけたことがあります。大きさも大きめのアリといった感じで、知らなければ手でつぶすこともあるくらいの虫だと思います。
Wikipediaより。アリくらいの大きさです。
この虫のもつ体液が人間に対して毒性を持っており、触れた後数時間以上経過してから皮膚の腫れやただれが生じたりします。気づかないでふいにつぶしたりすると、いきなり皮膚が腫れてびっくりしてしまうケースもあると思います。ミミズ腫れや水疱ができてしまうようなことも多々あります。この腫れ・ただれがまるで火傷のようで痛みを感じるためにヤケドムシといわれるようになったのだと思いますが、この虫を誤ってつぶしてしまったときは、水道水あるいは生理食塩水でよーく流して洗い、その上でできるだけ早く来院していただきその箇所に対する薬(ステロイド軟膏など)を塗布していただいたほうが良いです。このヤケドムシの毒はとても強力なので、薬を塗っても大きく改善しないことも多々あります。一番大事なことは触らないことなのです。とはいえヤケドムシとわからなかったり、あるいは無意識のうちにその虫をつぶしてしまい、後から腫れてきたり痛くなってきた場合もおおくあります。その際もできるだけ早い段階でよく洗って冷やした上で来院していただくほうが良いです。特に目に入ってしまった場合はかなり厄介で、失明の報告もあります。
生理食塩水はNaCl0.9%と言ったり、この写真を見せればどこの薬局でも基本的に売っています
できるだけこの虫を見たらつぶさないで紙やティッシュなどで払いのけたりどこかへやったりしたほうが良いと思います。特にお子さんは知らずうちに手を出していると思いますのでくれぐれもお気を付けください。ベトナム人たちに聞いたところ、「箒などで掃いてどっかにやる!」と言っていました笑。
なお、一般的な虫よけがこのヤケドムシにも効果があるのかは私は存じ上げません。ヤケドムシは飛来してくるものなので、網戸をして家の中への侵入も防ぎましょう。中のおっさんは家に帰ったらヤケドムシが侵入していたことがありましたが、油断してはなりませぬ…。高いところにお住まいでも飛んできます…。
なお、このヤケドムシの毒液は、がん細胞などの細胞までも影響を及ぼすらしく、抗がん剤として利用できないかの研究が行われているそうです。もしそうなったら「ヤケドムシの野郎」ではなく「ヤケドムシ様」と呼ばれるようになるのでしょうか笑。
まだまだ暑さも続き、虫たちも元気です。蚊だけではなく、こういう虫たちにもご注意ください!
written by Dr Kubo2022.08.25